2023年、年間同人総合売上本数ランキング(集計日2023年12月13日)
レポートの概要
タイトルの表はDLsiteの2023年の年間売り上げ本数ランキングTOP30になります。今回はこちらのランキングデータを使って、売れている作品にはどのような傾向があるか、ランキングに載る確率を増やすにはどのような販売戦略を取るべきかという分析をしました。
結論としては
超低価格帯や大幅割引品を除いた分析において、DLsiteでは
・年間総合ランキングTOP30には、2000円前後のRPG及びシミュレーションゲームが載りやすい。
・「ランキングに載る前提」であれば、価格と売上本数に相関はないため、価格が高いほど利益がでやすい
・ランキングに載るためには年間35000本(一日平均100本程度)の売上げが必要
・ゲームにおいて実際にランクインしているものだけで見ると一日平均200本の売上げが必要
・発売時期は8月がデッドライン
という結果になりましたので、これらのことを説明していきます。
また分析対象の作品群には「大幅割引」や「超低価格帯」戦略を取り、売上本数を伸ばしている作品もありましたので、これらの作品を含めた場合と含めない場合で別々に分析をしました。
まず、低価格品を除外せず、ランキングデータをそのまま使った分析から始めます。
ランキング全体のデータ
実際の個数は全体30、ゲーム16、ボイス7、マンガ6、CG1
割合としては低価格品が多い。
ランキングTOP30の作品について、価格帯ヒストグラムを見ると、110円〜610円までの低価格帯商品が多いことがわかります。さらに、このデータは割引前の「定価」で分析しているため、割引適用後の実売価格を考慮した場合、この傾向はさらに強くなります。
ランキングに載せるだけであれば、超低価格や大幅割引による低価格帯戦略は有効だと言えそうです。
ジャンルはゲームが多い。ボイスはほとんどが超低価格
ランキングに載っている作品ジャンルについて、ジャンル別内訳の円グラフを見ると、ゲーム作品が半分以上を占め、次いでボイス作品が多いことがわかります。しかし、ボイス作品はその半分以上が定価110円の超低価格帯に属しているため、後に説明する超低価格帯や大幅割引品を除いたデータでは、ゲーム以外の割合は大きく下がり、ゲームの割合は74%に増加します。
DLsiteにおけるCG集は、少なくともランキングという観点では非常に弱い
今回の分析では年間総合ランキング30位以内に入ったCG集は一作だけでした。しかし、この唯一の作品も9割引きという大幅な割引戦略を取っているため、後半のデータでは除外されています。このことからDLsiteにおけるCG集は、ランキングという意味では非常に弱いと言わざるを得ません。ただし、一年以内の販売開始作品はゲームが3000本に対しCG集は7500本と倍以上違うため、そもそもの競争率が違うことには留意しなければいけません。
ここからは、50%以上の大幅な割引品や定価110円などの低価格戦略を取っている作品を除外したデータを見ていきます。
50%以上の割引品、定価110円の超低価格帯を除外したデータ
実際の個数は全体19、ゲーム14、マンガ3、ボイス2、
低価格品を除くとゲームの人気度がよくわかる
大幅割引品や低価格品を除外した場合、作品数は30→19本になります。価格帯は2000円前後の作品が一番多くなり、全体に占めるゲームの割合は75%程度に増加します。この変化は、ゲーム以外の作品はその多くが低価格で販売し、売上本数を稼ぐ戦略を取っていたのに対し、ゲーム作品はその多くが定価のままか少額の割引しかしない状態でランキングに入っていたことが理由だと言えます。
このことからDLsiteではゲームの需要が高く、質の高いものは高価格帯であっても大きく売れる傾向が見て取れます。
上のデータをさらにゲームに絞って分析
DLsiteにおける年間総合ランキングではゲームがかなりの割合を占めていることがわかったので、ここからはゲームについての分析をしていきます。大幅割引や定価が110円の作品を除いたゲームのデータ数は14個です。(後日、ゲームのみの年間ランキングについても分析予定です)
価格は1500~2500円前後が多い
まず、価格について。総合ランキングTOP30に載っているゲームの平均価格は2640円。中央値は2420円です。
500円区切りのヒストグラムは以下のようになっており、1500〜2500円前後に集中していることがわかります。
価格と売上本数の相関について。価格と売上本数には相関がない→価格が高いほど利益が大きくなる
次に価格と売上本数の関係を見ていきます。これは横軸が価格、縦軸が売上本数の散布図です。
価格と売上本数の相関係数は、-0.134。これは、価格と売上本数に相関がほぼないことを示しており、言い換えると、少なくとも年間総合ランキングTOP30内においては、価格が高いから売れない、あるいは、安いから売れる、という関係は見られない。ということになります。(とはいえ、そもそもが売上本数ランキング上位内での結果なので、登録作品全体で見た場合、また違う結果が出る可能性が高いです)
そして、価格によって売上本数に違いが出ないということは、値段を上げれば上げるだけ利益が大きくなるということです。下は横軸が価格、縦軸が制作サークルの概算手取り金額の散布図です。
こちらの相関係数は0.84709とかなり高い相関を示しました。つまり、総合ランキングに載る作品においては、価格を上げるほど利益が大きくなることを示しています。
以上をまとめると、総合ランキングに載る作品において、価格は売上本数に影響しない(どの価格帯も同じ程度に売れる)。それ故に価格が高いほど利益は大きくなる。という傾向が見て取れます。
ただし、繰り返しておきますがこれはあくまで「総合ランキングTOP30に載っている作品」のみでの分析結果ですので、ゲーム作品全体に当てはめて考えることは危険です。高くても安くても売れなかった作品などは、そもそもこのデータに入ってきません。
総合ランキングに載るゲームジャンルについて、RPGとシミュは同じくらい(シミュのほうが打率高)
年間総合ランキングに載っているゲームジャンルについては、アクションゲーム1本を除くと、RPGが7本、シミュレーション6本とほぼ同数です。ただし、一年以内に発売した「同人・RPG・成人向け」で検索した場合の作品数は1282件、同じ条件のシミュレーション作品数は760件でした。
この数字から、それぞれのジャンルでランキングに載る確率を計算すると、
RPGゲームが総合ランキングに載る確率0.55%
シミュレーションゲームが総合ランキングに載る確率0.79%
となります。
つまり「総合ランキングに載るゲームはRPGとシミュレーションがほぼ同数だが、各ジャンル内で考えるとシミュレーションゲームのほうが確率が高い」という結果になりました。(ただし、割合を出すにはデータ数が少ないことには留意する必要があります)
年間総合ランキングに載せる戦略について
販売本数は一年で35000本が目安(一日100本)実際のデータで見ると、ゲームなら一日200本が目安。
今回の年間総合ランキングの30位は今年発売のゲームで、売上本数は33636本でした。集計日が12月13日なので、年末までの残り期間を考えると、大体一年で35000本がボーダーとなります。
365日で割って一日あたりに直すと、一日100本程度です。
ただし、実際にランクインしている作品は発売日から1200日以上経っている外れ値の作品一本を除いて、平均234日でランキング入りしています。最低ラインの35000本をこの数字で割ると一日あたり141本となります。
なお、低価格・大幅割引を除いたゲーム作品だけで見た場合、販売開始日からの経過日数の平均は176日でしたので、35000で割ると、一日あたり198本。ゲームは他作品と比べてもかなり短期間でランキング入り水準に到達していることがわかります。これをもとに考えると、通常価格のゲームでランキングTOP30入りを狙うなら実質的には一日平均200本程度の売上がボーダーラインとなりそうです。
発売時期について。最低でもその年の8月には販売したい
年間総合ランキング(売上本数)に載るかどうかは「その年の売上本数」のみで決まるようです。そのため、前年や前前年の発売であっても、本数だけ確保できればランキングには載ります。そうなると、ランクインの確率を高めるためには、年末年始にかけて販売を開始し、一年をフルに使うのがよいと思われます。
ただし、今回のデータでは特にそのような傾向は見られませんでした。
以下は、発売日から1200日以上経った外れ値一作を除いて、発売からの経過日数ごとにランクインした作品の個数をまとめたものです。
これを見ると、12月13日時点で、発売後90日以上365日以内の作品については30日刻みで大体均等にランクインしています。ところが発売から90日未満の作品でランクインしているのは一本のみです。これはまだ販売期間が短いために、十分な販売数が稼げていないためだと予想されます。データ集計日から年末までは+15日ほどあるため、年末から逆算して120日前、つまり8月頃までに発売することが、狙って年間ランキングTOP30に入れるギリギリのラインとなってきそうです。
分析結果まとめ
以上のことから結果をもう一度まとめると、分析結果は以下のようになります。
・超低価格帯や大幅割引品を除いた分析において、DLsiteでは2000円前後のRPG及びシミュレーションゲームが年間総合ランキングTOP30に載りやすい。(打率が高いのはシミュレーション)
・また「ランキングに載る前提」であれば、価格はそれほど売上本数に影響を及ぼさないため、高価格帯のほうが利益が乗りやすい傾向にある。
・年間ランキングに載せるためには、年間35000本、一日平均100本程度の売上げが必要になる。(実際のデータから見るとゲームの場合は200本程度)。
・発売時期は8月までが望ましい。
という結論になります。
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